九州 歴史ツアー

九州は福岡県・大分県・佐賀県・長崎県・熊本県・宮崎県・鹿児島県の7県なのになぜ”九”州？と疑問に思われている方は多いと思いますが､その答えは九州の歴史にあります！

古代､古事記や日本書紀では現在の九州は「筑紫島・筑紫州」と記載されていて､筑紫国､火国､豊国､日向国､熊襲国があると記載されています｡

時代は下り､飛鳥時代の701年に制定された大宝律令によって現在の九州は「西海道」という広域エリアに区分され､筑前国､筑後国､肥前国､肥後国､豊前国､豊後国､日向国､大隅国､薩摩国の9つの国から構成されるとなり､この国は､明治維新まで続きます｡

そうです”九”です！「州」は行政区分を意味していて､9つの国からなるエリアだから「九州」と呼ばれるようになりました｡

古代､九州は筑紫島と呼ばれていましたが､「筑紫」は現在の福岡県の大部分を占めるエリアであり､現在の福岡県は古代から現在まで九州を代表するエリアとして数々の遺跡や資料が残されています｡

九州旅行の玄関口として福岡県は訪れやすく､歴史ツアーの合間にグルメやショッピングも楽しめるので初めての九州旅行であればまずは福岡県がおすすめ｡

そこで現在､福岡県で保存されていて訪れることが可能な遺跡や歴史スポットをご紹介します｡

板付遺跡弥生館

福岡空港のすぐ近くにある板付遺跡は､旧石器時代から中世にかけての遺構が発見されていますが､メインは弥生時代の遺跡です｡

水田稲作の痕跡や､環濠､住居､墳墓など弥生時代の人々の生活や社会を解明するための数々の発見がされている貴重な遺跡です｡

春日市奴国の丘歴史資料館

国宝「漢委奴国王」の金印で知られる「奴国」の中心地とされる「須玖岡本遺跡」に建つ歴史資料館で､須玖岡本遺跡をはじめ､春日市内から発掘された青銅器や鋳型､土器などが展示されています｡

また､屋外の公園にはドーム型の覆屋で保護された発掘した状態の甕棺墓を見学できたり､近隣で発見されたとされる奴国王の墓の蓋石と伝わる上石が展示されています｡

福岡市博物館

国宝「漢委奴国王」の金印が所蔵・展示されている博物館です｡金印は､江戸時代に志賀島で偶然発見され､福岡藩主である黒田家が代々所蔵していたものが､福岡市に寄贈されました｡

金印が発見された志賀島､奴国の中心地とされている現在の春日市や､福岡市の一部は､明治以前は筑前国那珂郡という地名で､「那珂」は「奴」の名残とも言われています｡

元寇防塁

鎌倉時代の1274年にモンゴルからの襲来を受けた鎌倉幕府が､1276年に博多湾の海岸線に石積みの壁を築いて再度の襲来に備えました｡この石積みの壁が「元寇防塁」です｡

現在も福岡県の海岸沿いに痕跡が残っていて､見学をすることが可能です｡

太宰府天満宮

平安時代京都から太宰府へ左遷され､失意のうちに亡くなった菅原道真を祀る神社です｡

903年､住まいであった太宰府政庁の南館（現在の榎社）で亡くなった菅原道真の亡骸を牛車に乗せて運んでいたところ､途中で牛が動かなくなってしまい､牛が動かなくなったのは菅原道真の遺志によるものであるとして､その地に埋葬されることになりました｡

その地というのが現在の太宰府天満宮で､当初は墓所の上に廟が創建されただけでしたが､その後立派な社殿が建立されて現在まで続いています｡

長崎県は旧石器時代の遺跡もあり､古代から人々が暮らしていることが知られています｡

魏志倭人伝に記載のある對海国は対馬､一支国は壱岐と比定されていて､地名､遺跡などからも有力とされています｡

また､長崎県で特筆される歴史として戦国時代から江戸時代にかけての南蛮貿易の拠点や､太平洋戦争時の原爆投下についてなど重要な歴史スポットがありますのでご紹介します｡

鎮西大社 諏訪神社

長崎でかつて祀られていた諏訪､森崎､住吉の三社を､戦国時代の1625年に再興したのが現在の諏訪神社の始まりです｡

江戸時代には幕府から社地を得て､社殿が建立されましたが､火災で焼失し､明治､昭和､平成の造営によって現在の社殿が完成されました｡

また､長崎県の祭りとして有名な「長崎くんち」はこの諏訪神社の例大祭で､国の重要無形民俗文化財に指定されています｡

出島和蘭商館跡

長崎は､戦国時代にポルトガル船が平戸に来航､天正遣欧少年使節が長崎から出港など古くから海外に開かれた港街でした｡

江戸時代に徳川幕府による鎖国政策で西洋との貿易が禁止されましたが､幕府直轄領である長崎のみが貿易を許され､当初はポルトガル人を管理するために1634年から扇形の形をした人工島として建設されたのが出島です｡

島原の乱以降､カトリック国との関係を断絶しようとの幕府の意向により､出島はしばらく無人状態でしたが､平戸にあったオランダ商館が1641年に出島に移されてから､明治維新後の開国までの約200年間､日本で唯一西洋に開かれたエリアとして管理されていました｡

幕末の開国以降､出島は拡張や埋立て等が進み､1904年に扇形の人工島は完全に姿を消して現在に至ります｡

平和公園

平和公園は､1945年8月9日に長崎に投下された原爆の落下中心地に世界平和の願いを込めてつくられた公園です｡

平和公園にある「平和祈念像」は､右手は店に向かって挙げられていて原爆の脅威を､左手は水平に伸ばされていて平和を､軽く閉じた目は犠牲者の冥福を祈るという思いが込められています｡

また､平和祈念像の前にある「平和の泉」は､被爆者たちが水を求めて苦しみながら亡くなったことから､犠牲者に水を捧げるために設置されています｡

長崎原爆資料館

長崎原爆資料館は平和公園に隣接した原爆の悲惨さを後世に伝えるための資料館です｡

元々は､1955年に開館した長崎国際文化会館の原爆資料センターとしてあったものが､展示施設の充実のために建て替えられ､1996年に現在の長崎原爆資料館として開館しました｡

長崎市原爆資料館の展示は､長崎市へ投下された原爆に関するものだけでなく､広く放射能の恐ろしさについて解説したコーナーもあり､原子力問題を扱う資料館となっています｡

大分県は戦国時代にはキリシタン大名として有名な大友宗麟の領土であり､江戸時代には日田は幕府直轄領「天領」として栄えました｡

また､中津は戦国時代は黒田孝高（如水）が築城し､細川忠興が完成させた中津城があり､幕末はお札の顔として有名な福沢諭吉の縁の地として歴史スポットが多数あります｡

大分とえば別府や湯布院などの温泉が有名なので､歴史スポット巡りで疲れた体を温泉で癒すのんびり旅行はいかがでしょうか｡

宇佐神宮

宇佐神宮は571年創建と伝えられる古い神社で､全国に4万社以上ある「八幡宮」の総本宮として祀られてきました｡

歴史好きの方なら「宇佐八幡宮神託事件」をご存知でしょうか？奈良時代の769年､称徳天皇の側近であった弓削道鏡を皇位につかさたなら天下は太平になるという神託を宇佐八幡宮から受けたとの奏上が発端となった事件ですが､その神託を受けたと言うのがこの宇佐神宮です｡

奈良にある朝廷が､大分にある宇佐神宮まで使者を派遣して重大事を訊くというのは､よほどの信頼と崇敬をよせているという証拠でしょうね｡

中津城

中津城は戦国時代の1588年､豊臣秀吉から豊前国を与えられた黒田孝高（如水）が､築城を開始しましたが､関ヶ原の戦い後､黒田家は加増の上で福岡に転封となったため､築城は中断されましたが､黒田家の後に領主となった細川家によって完成されました｡

中津城の堀の水は海につながる中津川から引かれていて､日本三代水城のひとつに数えられています｡

現在建っている天守は昭和になって再建された模擬天守ですが､城内は資料館として公開されていて､最後の城主であった奥平家に伝わる資料を見学することができます｡

現在の熊本県は旧国名では肥後国ですが､古くは「火国」と記載されていました｡「火」は火山を連想させ､阿蘇地域の火山などが国名の由来かなとも考えられますが､国名の由来は「肥後風土記」や「日本書紀」によると夕暮れの空が真っ赤だったとか､有明海の不知火が由来だと書かれています｡いずれの説だったとしても熊本県の地域をよく表した国名ですね｡

肥後国は古代は「熊襲」と呼ばれる人々が大和政権と対立したという伝承があり､独自の勢力画あったものと考えられています｡

そんな古代から脈々と続いている熊本県にある歴史スポットのいくつかをご紹介します｡

熊本城

熊本城は平安時代の千葉城に始まり､戦国時代､築城の名手と言われる加藤清正が城郭を築き始め､1600年頃に天守が完成しました｡

江戸時代になると加藤家はお家騒動により改易となり､豊前国の領主であった細川家が肥後国の領主となり､熊本城の整備・拡張が続けられ明治維新を迎えました｡

明治維新直後､西南戦争時に火災により天守､本丸御殿などが焼失しましたが､石垣や宇土櫓などは現存しており､国の重要文化財に指定されています｡

2016年4月に発生をした熊本地震で大きな被害を受けましたが､2021年に天守閣の復旧工事が完了し､見学が再開されました｡

熊本市田原坂西南戦争資料館

田原坂は熊本市の北区にある古戦場です｡明治維新直後に西郷隆盛を盟主として起こった西南戦争の激戦地として知られています｡

田原坂のすぐそばには「熊本市田原坂西南戦争資料館」があり､実際に使われた銃や古文書などが展示されています｡

宮崎県は日本神話の故郷で､初代天皇とされる神武天皇の生誕の地です｡神武天皇は日向国（宮崎県）で生まれ育ち､成人した後に､日向を出発し､宇佐､安芸国､吉備国､難波国､河内国､紀伊国を経て大和国の畝傍山の麓で初代天皇として即位したとされています｡

神話の話も含むので､すべてが史実ではないかもしれませんが､日本書紀の記載を元に明治時代に即位日が計算され､西暦紀元前660年2月11日が神武天皇の即位日とされたことから2月11日を「紀元節」として祝日となり､現在の「建国記念の日」へと繋がっています｡

そんな現代の生活にも繫がる神話にかかわる宮崎県の歴史スポットなどをご紹介します｡

高千穂・槵觸神社

高千穂は､神話にまつわるスポットの中でも最重要！天照大神の孫のニニギノミコトが「天孫降臨」したと伝えられる有力な候補地が宮崎県の高千穂です｡

古事記に「日向の高千穂の久士布流多気に天降ります」と記載がされていますが､高千穂には「槵觸（くしふる）神社」という神社があり､古くは槵觸山を神体山として祀られていましたが､江戸時代に社殿が建立されました｡

狭野神社

狭野神社は現在の地に遷座したのは江戸時代ですが､元々は神武天皇生誕の地に創建されたと伝わる神社です｡

神武天皇の幼名「狭野尊」は､出生地の「狭野」に由来していると言われていて､この狭野神社の周辺の古い地名が「狭野」であり､神社周辺には神武天皇にまつわる伝承が残っています｡

鹿児島県は桜島などをはじめとする火山が多い地域で､鹿児島本土の50%以上が火山の噴出物からなる台地です｡古代から火山活動が活発な地域ですが､その中でも約2万9千年前～2万6千年前に噴火をした姶良カルデラの火山灰は東日本にまで影響を及ぼすような大噴火で､日本列島の気候が寒冷化したとも言われています｡また､考古学の発掘時にこの姶良カルデラから噴出した火山灰が含まれる地層の上か下かで年代の指標とされるなど､鹿児島県のみならず日本全国に影響を与えています｡

古代から人々の営みがあり､遺跡も数多く残っている鹿児島県ですが､鹿児島県といえば明治維新の英雄西郷隆盛や大久保利通の出身地として､幕末から明治にかけての歴史も有名ですね｡

そこで鹿児島県の古代や幕末の歴史スポットをご紹介します｡

熊襲の穴

鹿児島県霧島市にある「熊襲の穴」という洞窟は､古代に「熊襲」と言われる部族が住んでいたとされています｡

古事記には大和政権に従属しない熊襲を征伐するためにヤマトタケルノミコトが｡熊襲の首領兄弟が宴会をしているところに女装をして紛れ込み､討ち取ったという記述がありますが､その宴会をしていた場所がこの「熊襲の穴」とも伝えられています｡

霧島温泉

幕末の志士坂本龍馬が､妻であるお龍と湯治に霧島温泉を訪れたのが日本初の新婚旅行といわれています｡

坂本龍馬は霧島温泉滞在中に高千穂に登り天逆鉾を見たり､霧島神社を参拝したりと周辺も観光したようです｡

霧島温泉周辺には龍馬が入ったとされる湯船や資料館､銅像などが点在しているので､龍馬夫妻の足跡をたどりながらの観光もおすすめです｡

佐賀県の歴史スポットは？と聞かれてもすぐに思い浮かばないかもしれませんが､「吉野ヶ里遺跡」「伊万里」「唐津」などスポット名を挙げると歴史ファンでなくても聞いたことがある､知っている有名な歴史スポットがたくさんあります｡

幕末には西洋からの技術をいち早く取り入れて牛痘ワクチンを輸入して天然痘の根絶に努めたり､蒸気機関車や蒸気船を製造したりと革新的な藩として知られています｡

そんな歴史あふれる佐賀県の歴史スポットをいくつかご紹介します｡

吉野ヶ里歴史公園

吉野ヶ里遺跡は約700年間続いた弥生時代の全ての時期の遺構や遺物が発見されている大規模な遺跡です｡

弥生時代は小規模な「ムラ」から､「クニ」へと移り変わる時代で､吉野ヶ里遺跡でも小規模な集落から､環濠が掘られて外敵からの防御を厳重にしたり､「クニ」を治めていたであろう首長の墓など様々な痕跡が残っています｡

吉野ヶ里遺跡は､魏志倭人伝に記載されている邪馬台国の時期とも重なります｡邪馬台国もこんな風景だったのかなと思いを馳せながら見学すると楽しいですね｡

伊万里焼

佐賀藩の藩祖である鍋島直茂が豊臣秀吉の朝鮮出兵に参加したことがきっかけで､朝鮮半島の技術者が移り住み､有田周辺で磁器の原料となる陶石が発見されたことから有田周辺で窯業が盛んになりました｡

伊万里港から積み出されていたため伊万里焼と呼ばれていますが､有田を中心として焼かれていたので､伊万里焼≒有田焼です｡

また､「鍋島焼」は佐賀藩の直営の窯で焼かれた高級品で､将軍家や諸大名への贈答品として用いられた焼き物を指しますが､この鍋島焼も伊万里焼の一様式とされています｡

現在でも伊万里・有田周辺にはたくさんの窯元があり､販売も行っているので歴史に興味のない同行者がいても訪れやすい観光スポットではないでしょうか｡